【経営者 vs サラリーマン】資産2億円の差を生む「役員社宅」という富のチートコード

マイクロ法人

世間では、いまだに「持ち家か、賃貸か」という議論が繰り返されている。サラリーマンがなけなしの可処分所得を天秤にかけ、どちらがマシな選択かを語り合う。だが、その議論は、ある種の人間にとってはまったくの無意味だ。

それは、自らの事業を持つ「独立したプロフェッショナル」――すなわち、法人オーナーである。

彼らにとって、この問いの立て方そのものが間違っている。彼らが解くべき問題は「持ち家か、賃貸か」ではない。「税引き後の個人の財布から払うか、税引き前の法人の財布から払うか」という、まったく次元の異なるゲームなのだ。

そして、このゲームのルールを理解する者にとって、個人でマイホームを買うという選択が、いかに愚かで、資産形成において自殺行為に等しいかが、火を見るより明らかになる。

「税引き後の財布」と「税引き前の財布」――あなたの人生を決めるたった一つの違い

まず、この国の残酷なルールを直視しよう。

サラリーマンの現実:
給与所得という形で会社から報酬を受け取る。しかし、その瞬間に所得税・住民税・社会保険料として、実にその半分近くが天引きされる。残った「税引き後のカネ」で、彼らは住宅ローンを払い、子供を育てる。これが「税引き後の財布」の現実だ。

法人オーナーの現実:
法人が上げた利益は、まず法人のものだ。そこから、事業に必要な経費を支払っていく。そして、驚くべきことに、この国では「役員社宅」という制度により、社長が住む家の家賃も法人の経費として認められる。 税金は、すべての経費を支払った後の、残った利益に対してのみ課される。これが「税引き前の財布」の特権だ。

この構造的な違いが、35年という長い歳月を経て、どれほど絶望的な資産格差を生み出すのか。シミュレーションで見ていこう。

資産2億円の差。神は細部に宿り、悪魔は税金に潜む

前提として、35年前、あなたは自己資金5000万円を持つ法人オーナーだとする。

【ケースA】個人でマイホームを購入する道

行動: 5000万円で住宅を現金購入。その後、賃貸派より支出が少ない分(浮いた家賃-維持費)を毎月投資に回す。

  • ① 積立投資の資産:
    月々の差額(浮いた家賃20.8万円 – 維持費4.2万円 = 月々16.6万円)を35年間、年利5%で積立投資。
    → 結果: 約1億8,080万円
  • ② 物件の資産価値:
    購入時5000万円の物件は、35年後に1,800万円の価値に減少。
  • 最終純資産 (① + ②):
    1億8,080万円 + 1,800万円 = 約1億9,900万円

【ケースB】法人で賃貸に住む道

行動: 家賃を法人経費で支払い、自己資金5000万円と、それによって生まれた節税メリット分を全て投資に回す。

  • ① 初期資産の運用資産:
    最初に投資した5000万円を35年間、年利5%で複利運用。
    → 結果: 約2億7,580万円
  • ② 節税メリットの積立資産:
    家賃の法人経費化による節税メリット(年間250万円 × 税率50% = 125万円、月々約10.4万円)を35年間、年利5%で積立投資。
    → 結果: 約1億1,330万円
  • 最終純資産 (① + ②):
    2億7,580万円 + 1億1,330万円 = 約3億8,900万円
【A】個人で持ち家を買う 【B】法人で賃貸に住む
35年後の最終純資産 約2億円 約3.9億円
資産の差額 賃貸が約2億円優位

その差、実に約2億円
この天文学的な差は、あなたの努力や才能、事業の成功とは何の関係もない。ただ、あなたが税金のルールを知っていたか、知らなかったか。ただそれだけで生まれた残酷な格差なのだ。

なぜ、この「チートコード」は存在するのか

役員社宅は、別に法律の抜け道(ループホール)などではない。法人と個人を別人格として扱う、近代国家の当然の帰結だ。国は、事業活動を奨励するために、法人に様々な経費の計上を認めている。賢者は、このルールを最大限に活用する。

個人でマイホームを買うということは、この法人に与えられた最大の武器を自ら放棄し、丸腰で戦場に出るようなものだ。100m走で、わざわざ50m後ろからスタートするようなものである。なぜ、そんな自傷行為を選ぶ必要があるのか。

結論:問いを立てる能力が、あなたの階級を決める

法人オーナーにとって、「持ち家か、賃貸か」という問いはもはや意味をなさない。

問うべきは、「自分の住居コストを、どの財布から支払うのが最も合理的か」だ。
その答えは、言うまでもなく「税引き前の法人の財布」である。

マイホームという情緒的な満足感のために、2億円という巨額の富と、法人オーナーという特権をドブに捨てる覚悟があるなら、止めはしない。だが、金融資本主義の冷徹なゲーム盤の上で、それは悪手以外の何物でもない。

本当の富裕層とは、単に収入が多い人間ではない。この世界のルールを深く理解し、自らの資産を守るための「富のインフラ」を設計できる人間のことだ。あなたの法人こそが、その最強のインフラなのである。

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