【連載 Vol.3】税務署は「事実」を見ない。鉄壁の理論武装と「是認」の勝ち取り方

「税務調査が来たら終わりだ」。多くの節税実践者はそう怯えている。だが、それは間違いだ。税務調査は災害でも天罰でもない。単なる「論理の答え合わせ」の場に過ぎない。

私はマイクロ法人を運用して数年目に税務調査を受けたが、結果は「是認(お咎めなし)」だった。なぜか? 私が清廉潔白な聖人君子だからではない。調査官がぐうの音も出ないほど、完璧な「物語(ロジック)」を用意していたからだ。

彼らは「事実」を見ているのではない。提出された書類が織りなす「法的な整合性」を見ているのだ。

「医業」と「コンサル」を分かつ分水嶺

医師がマイクロ法人を持つ際、最大の争点は「その売上は、実質的に個人の診療報酬ではないか?」という点だ。調査官はこう攻めてくる。「先生、法人で契約しているコンサル業務って、結局は病院での診療のついでにやってるだけですよね? ならば実質的な給与として個人に課税します」

これに対する私の回答はシンプルだ。「いいえ、物理的に不可能です」。

私は、個人としての雇用契約(診療)と、法人としての業務委託契約(コンサル)を、明確に切り分けている。重要なのは契約書だけではない。「時間」と「成果物」の分離だ。

診療行為は、患者と対峙している瞬間に発生する。しかし、法人の業務である「コメディカルへの教育指導」や「経営改善レポートの作成」は、診療時間外に行われる。

「このレポートを見てください。これは私が自宅で週末を使って作成し、月曜日に病院へ提出したものです。これは診療行為ですか? 医師免許がなければ書けないものですか? 違いますね。純粋な知的生産活動、つまりコンサルティングです」

成果物(レポートやスライド)という物理的な証拠を突きつけられれば、調査官は沈黙するしかない。

「形式」こそが最強の防具

多くの人が勘違いしているが、税務調査で負けるのは「悪いことをした人」ではない。「ズボラな人」だ。

実態があっても、議事録がなければ否認される。逆に、実態が怪しくても、完璧な議事録と契約書、成果物が揃っていれば、役所はハンコを押さざるを得ない。

私は毎月、法人としての業務報告書を作成し、クライアント(病院)に提出している。自分自身への役員報酬を決める際も、株主総会議事録を(自分一人で)作成し、保管している。「そこまでやる必要があるのか?」と笑うかもしれない。だが、このA4用紙数枚の紙切れこそが、数千万円の資産と、社会的信用を守る最強の防具になるのだ。

日本の行政は、徹頭徹尾「形式主義」だ。ならば、そのルールを逆手に取ればいい。彼らが愛してやまない書類を山のように積み上げ、論理的な整合性で固めてしまえば、彼らは手出しができなくなる。税務調査とは、この「書類という名の城壁」の強度テストに過ぎない。

守りが固まったところで、次回はいよいよ「攻め」の話だ。マイクロ法人を使った経費と投資の錬金術について解説する。

タイトルとURLをコピーしました